行政書士法人が一人で作れるようになりました<2021年6月4日行政書士法一部改正施行>

行政書士法人が一人で作れるようになりました

2019年12月に公布された「行政書士法の一部を改正する法律」が、2021年6月4日に施行されました。
これにより、これまで行政書士が二人以上いないと作れなかった行政書士法人が、一人で作れるようになりました。
そこでここでは、一人で行政書士法人を作った場合のメリットデメリットを含め、一人行政書士法人について解説していきます。

行政書士法の一部を改正する法律とは

まず、今回施行された「行政書士法の一部を改正する法律」ですが、次のような内容になります。

◇行政書士法の一部を改正する法律(法律第六一号)(総務省)

1 目的の改正
  法律の目的に、国民の権利利益の実現に資することを明記することとした。(第一条関係)

2 社員が一人の行政書士法人の設立等の許容
 (一) 行政書士法人を社員一人で設立することができることとした。(第一三条の三及び第一三条の八第一項関係)
 (二) 行政書士法人の解散事由として、社員の欠亡を追加することとした。(新第一三条の一九第一項第七号関係)
 (三) 社員が一人になったことを行政書士法人の解散事由とする規定を削ることとした。(第一三条の一九第二項関係)
 (四) 行政書士法人の清算人は、社員の死亡により社員が欠亡し、行政書士法人が解散するに至った場合には、当該社員の相続人の同意を得て、新たに社員を加入させて行政書士法人を継続することができることとした。(新第一三条の一九の二関係)

3 行政書士会による注意勧告に関する規定の新設
  行政書士会は、会員がこの法律又はこの法律に基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反するおそれがあると認めるときは、会則の定めるところにより、当該会員に対して、注意を促し、又は必要な措置を講ずべきことを勧告することができることとした。(新第一七条の二関係)

4 この法律は、公布の日から起算して一年六月を経過した日から施行することとした。

この中の「2」が、今回お伝えする「一人でで行政書士法人が作れるようになった」部分です。

これまでは、行政書士法人を作るには、2人以上の行政書士が必要でした。
社員は無限責任ということもあり、法人を作るには躊躇する人もいたはずです。
自分一人で法人化できるなら、やってみようかなと考える人もいるかもしれません。

また、開業する際に、個人事務所ではなく、いきなり行政書士法人で開業する人も増えるかもしれません。
まずは一人法人から始め、徐々に社員を増やすこともできるでしょう。

なお、行政書士法人の手引きは、日本行政書士会連合会のサイトに掲載されています。こちらもぜひご覧ください。
日本行政書士会連合会 行政書士法人の設立

行政書士法人のメリット

行政書士法人にするメリットとしては、次のことが挙げられます。

  • 法人の方が信頼されそう
  • 自分の給与が経費になる
  • 年商1000万を超えた個人事務所が法人化すると、2年間を目安に消費税が免除される
    ※2023年10月スタートのインボイス制度により消費税に関するメリットはなくなりそうです。
    ※インボイス登録をせずに課税事業者になることもできそうなので、詳しくは個別に調べておきましょう。

2人以上で行政書士法人を作る場合は、さらに次のようなメリットもあります。

  • 一人が亡くなっても法人は存続する
  • 社員の数だけ支店が作れる

支店が作れるため、法人として規模を拡大することが可能です。

一人行政書士法人の社員の死亡についても、「行政書士法の一部を改正する法律」の「4」で、社員の相続人の同意を得て、新たに社員を加入させて行政書士法人を継続することができるとあります。
個人事務所とは違い、法人にすることで代表社員死亡後の存続の可能性があり、お客様に安心感を与えることができるかもしれません。

行政書士法人のデメリット

次に、行政書士法人にするデメリットですが、次のことが挙げられます。

  • 利益0、赤字でも法人税を納税する
  • 税理士に決算を依頼すると費用が発生する
  • 行政書士会への会費が個人+法人分となる
  • 社会保険への加入が必要

このように、経費が増えるというのが大きなデメリットになります。

私は、行政書士事務所の個人事務所とは別に、株式会社をひとりで運営しています。
この場合、個人の確定申告と株式会社の決算が必要で、税務も納税も増え、メリットはあまり感じられません。
ただし、行政書士業務とは違う事業もしたいため、そちらを株式会社の方で行っています。

行政書士業務のみを行う場合は、行政書士法人をひとりで作り、税務上あるいはお客様からの信頼について、メリットがあるかもしれません。
これは、業務形態や、今後の目標、売上によって違って来るでしょう。

例えば今、個人で行政書士事務所を運営している場合、行政書士法人にしたらどうなるのか、シミュレーションしてみてください。
メリットデメリットを考え、自分が進みたい形に近い方を選ぶことをおすすめします。

ひとり行政書士に選択肢が増えた

一人で開業する場合、法改正前までは個人事務所しか選択肢がありませんでした。
ところが今は、法人も選べます。選択肢が増えるというのは、良いことですよね。

私自身は、これからもひとりで自由に活動することがテーマです。
もし、私が行政書士法人を作るなら、株式会社をやめて行政書士法人一本にするでしょう。
ただし、行政書士業務の他にもやりたいことがあるので、このままの形で進めます。

今回の法改正やひとり行政書士法人のメリットデメリットについては、YouTube動画にもまとめています。
よろしければ、こちらもご覧ください!

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